【第4回】ワインの楽しみ方をひも解く新連載。ゲストは小山薫堂さん。

【第4回】ワインの楽しみ方をひも解く新連載。ゲストは小山薫堂さん。2013.08.05 UPDATE

ゲスト:小山薫堂さん

グラスとワインの密なる関係を、日本で広める事に尽力した人物として知られているウォルフガング・アンギャル氏が、毎回ゲストを迎え、Wine Enjoymentの世界をひも解きます。
第4回目のゲストは、脚本家・放送作家であり、イベントや製品をプロデュースするなど多彩な才能を発揮する小山薫堂氏。
今回は、1973年に発売された<ソムリエシリーズ>の40周年を記念して「道具」としてのワイングラスをテーマに、具体的にテイスティングしながらそのデザイン性、機能性に迫ります。

道具としての機能と役割

アンギャル:本日はワイン愛好家でもいらっしゃる小山さんに、グラスの形状がワインの味わいにどのような影響を与えるか、試飲して確認していただきたいと思います。

小山:楽しみですね。「リーデル」のワイングラスはブドウ品種に対応して作られていますが、その開発のきっかけは?

アンギャル:<ソムリエ シリーズ>の原点でもある『ブルゴーニュ・グラン・クリュ』にあります。このグラスは1958年に作られ、ピエモンテやブルゴーニュ地方で絶賛された後、ボルドーの有名ワイナリーに寄贈されました。すると「確かに美しい。しかし残念ながら私のワインには合わないようだ」という言葉を「シャトー・ムートン・ロートシルト」のバロン・フィリップ氏からいただいたのです。ピノ・ノワールのワインは美味しく味わえるのに、カベルネ・ソーヴィニヨンには向かないのはなぜか?そこからグラスの形状とブドウ品種ごとの味わいの関係を本格的に研究し始めたのです。

小山:バロン・フィリップ氏の手紙から「品種に合わせてグラスを選ぶ」という発想が生まれたのは、興味深いエピソードですね。機能性を大切にするリーデルの姿勢が強く感じられます。

アンギャル:ワイングラスは美術品ではなく、人間がもともと持っている“感覚”という機能を高めてくれる「道具」であり、ワインの楽しさをさらに大きくしてくれるアンプのような役割があります。ワインは“五感”を使って味わうもの、その感覚をより伝えてくれるのがグラス。ですから、ワインにマッチするグラスを選ぶ必要があると、リーデルでは考えています。

グラスで広がるワインの楽しみ

アンギャル:ピノ・ノワールのワインを用意しましたので『ブルゴーニュ・グラン・クリュ』と『ボルドーグラン・クリュ』、形状の異なる二つのグラスで実際の味わいを比べてみましょう。

小山:同じワインなのに、グラスによって味わいの印象が全く違いますね! ボルドー用のグラスで飲むと、ピノ・ノワールの酸味が強く感じられます。レモン汁をグラスに塗っていたのかと思うほど(笑)。ブルゴーニュ用のグラスで味わえば、果実味と酸味のバランスが取れて滑らかです!

アンギャル:ワインがどのような角度で口に入って、どう広がるかで、味わいの印象が変わります。ブルゴーニュ グラスは、舌の先からそのまま奥へ細く流れますが、ボルドーグラスでは、舌の上全体にワインがゆっくりと広がります。その違いが味わいのバランスを変えるのです。それぞれの品種に合ったボウルのふくらみ、口のすぼまり加減で作られているので、品種に合わせたグラスを選ぶ事が大切です。

小山:なるほど。こうやって試飲すると違いがハッキリしますね!

ものづくりに携わった人へ送る“拍手”

アンギャル:ソムリエシリーズは、技術を極めた職人によるハンドメイドです。そのため少々値がはりますが……。

小山:すべて手作りで、精緻な質感、機能美に満ちたクオリティー、職人の想いがグラスを通して伝わって来ますね。私はお金を払う行為とは、ものづくりに携わった人たちへ送る感動と賞賛の“拍手”と考えています。だから使うほどに愛着もわきます。このグラスの価格も職人への拍手、決して高いとは思いません。

アンギャル:素敵な考えですね。拍手してもらえるようなグラスは、ワインを最大限に楽しむために大切な道具であり、私たちの考える「ワインエンジョイメント」の重要な要素を担っています。これからも品種に合わせた適切なグラスで、ワインの楽しみをもっと広げていきたいと思います。

対談を終えて、アンギャル氏の一言

アンギャル氏

「お金を払うこと」=「賞賛の拍手」。
小山さんが紡ぎだす言葉には、頭の中に明確な映像を浮かび上がらせる強烈なパワーを感じます。
さすがは日本を代表するクリエイターです!

【コラム】グラスの機能美を創り出す熟練の職人技

ステムとボウル部分をつなげて形成する作業中の職人チーム

リーデル家9代目当主、クラウス・リーデル氏がブドウ品種の個性に合わせた形状の異なるワイングラスを次々と開発、ワイングラスと味わいの深い関係をひも解いた。例えば、口のすぼまったピノ・ノワール用のグラスで飲む時には、頭を後方に傾けるためワインが舌の先へ細く流れ込み、果実味が強調されるのに対して、カベルネ・ソーヴィニヨン用のグラスは下の上全体にワインがゆっくりと広がり、渋味が和らげられるなどの違いを応用。また、多くのワイン生産者との“ワークショップ”を繰り返し、ワインの個性を最大限に引き出す機能的な形状に仕上げた。

<ソムリエ シリーズ>は、昔ながらの製法で、熟練したガラス職人によるハンドメイドで作られる。職人たちは5人1組のチームとなり、液体状に溶けたガラスから、あうんの呼吸でグラスを形成する。ボウル、ステム、台座の三つのパーツを手際よく成形するさまは、まさに職人技。特に難しいとされる台座を平らにして結合する高度な技術は、何年もの修行を重ねたマイスターならでは。精緻でありながら自然な曲線美と無駄のない機能美を紡ぎ出す職人の手により、<ソムリエ シリーズ>は作られている。

それぞれのグラスにワインを入れて傾けると
口の中でワインが広がる様子がわかります

ワインが舌の先に導かれる。タンニン控えめ、酸味が高めの赤ワインにベストマッチ

ワインが舌の中央に導かれる。タンニンが強く、酸味の控えめな赤ワイン向き

ゲストの選んだ1脚

リーデル・オー・トゥーゴー』は事務所の近くにあるお店を借り切って打ち上げをする時など、ワイングラスのない店でも手軽に持ち込めるのがいいですね。ステムがないのでかさばらず、出張の時にもこのグラスがあれば、どこでもワインを美味しく楽しめます。(小山薫堂さん)

小山薫堂さんプロフィール

小山薫堂さん
小山 薫堂Kundo KOYAMA

放送作家、脚本家、大学在学中に放送作家としての活動を開始。「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」など斬新な番組を数多く企画。
08年公開の「おくりびと」で映画脚本に携わり、第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞等、受賞多数。
このほか、観光庁観光アドバイザー、下鴨茶寮主人など活動分野は多岐に渡る。
また、10年には(一社)日本ソムリエ協会 ソムリエ・ドヌール就任(名誉ソムリエ)

ワイン王国
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この記事は2013年8月5日(月)発売「ワイン王国 No.76」に連載されました。
こちらからPDFファイルをダウンロードしていただけます。
ワイン王国 PDF(1.4MB)

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  • ウォルフガング J.アンギャル
  • Wolfgang J. Angyal

リーデル・ジャパン代表取締役社長/リーデル社認定シニア・ワイングラス・エデュケイター


オーストリア生まれ。1985年「技能五輪国際大会」で金メダルを受賞。その後「辻学園日本調理師専門学校」で教授を務める。2000年より現職。グラスとワインの関係を、最初に日本人に認識させた。

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