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2016/06/10

Column

キャビア(魚卵)にはワイン?日本酒? フードペアリングの可能性を広げる新しいコンセプトの日本酒・妙高酒造「Montmeru」シリーズ

Montmeru

ロシア語で「いくら」は「イクラ」

ロシア語で「キャビア」は、「チョールナヤ(黒い)・イクラー(魚卵)」。
そう「イクラ」なんです。あの軍艦巻きの海苔に囲われた空間に、溢れんばかりに盛られたオレンジ色の「いくら」は、ロシア語で「魚卵」全般を指す「イクラ」という言葉が日本に伝わり、そのまま鮭の卵を指す「いくら」という日本語になったものなのです。

この魚卵。ワインの世界でのフードペアリングでは、多くのワインがいとも簡単に返り討ちに遭ってしまう、難攻不落の強敵。魚卵とワインを口に含むと、時に「生臭み」が、時に「金属的な異質感」が口中に残ると言われ、一般的にはあまりオススメされない組み合わせの代表選手です。

特に「キャビア」は、その希少性や味わい深さから世界三大珍味のひとつとされている「魚卵」の最高峰。その華美なイメージからワインの中では「シャンパーニュ」と合わせて楽しまれることが多いようですが、そこにはフードマッチングという側面以上に、華やかでラグジュアリーなパーティーに共される、最高級の食材とワイン同士で「格を合わせる」という意味合いが強いように思われます。

「魚卵(キャビア)」にはどんなお酒が合う?

魚卵

ワインにとって難攻不落の難敵である「魚卵(キャビア)」。
この「魚卵(キャビア)」に合わせて飲むための日本酒があることをご存知でしょうか?

創業200年を誇る越後の酒蔵「妙高酒造」が造る、食材との相性を重視した酒質を備えた「Montmeru」シリーズのひとつ「Khaviyar カハーヴィア」。
このお酒は、まさにキャビアとの相性をイメージして醸されたお酒なのです。

アルコール度数は19から19.9、アミノ酸度は1.4という数字(公式HPより)ですから、高いアルコール度と豊富なアミノ酸をもつお酒ということですね。(ちなみに、大吟醸酒のアミノ酸度は1.0程度で、すっきりした味わいのものが多いですね)

ラベルもモダンでかっこいいですね。
ショップでふと目にしたら、すぐに日本酒とは思わないかもしれません。

「Khaviyar カハーヴィア」をよーく冷やして、大吟醸グラスに注ぎます。
香り立ちは穏やか、米の旨味をしっかりと感じられる香りです。
さすがに高いアルコール度数ですが、よーく冷やした温度と、大吟醸グラスによる舌上でのフローにより、20度弱というアルコール度数は感じません。
むしろ、しっかりと舌上に残る旨味を、高いアルコールが下支えをしているというイメージ。

ツブツブとした食感とともに感じる塩気、その後、舌の後半に残る魚卵(キャビア)の旨味が広がったところで、この「Khaviyar カハーヴィア」を口に含みます。
酒の甘み・旨味が塩気を包み込み、魚卵(キャビア)の旨味とお酒の旨味がアルコールのボリューム感とともに、いい塩梅で重なりあい、包み込むのが感じられます。
高いアルコール度数と旨味が生む柔らかく粘度の高いテクスチャーが、キャビアのそれとピタリと同質化します。

チーズとの相性を重視した日本酒「Foret de Fruit フォレ・ドゥ・フリ」

Foret de Fruit

この「Montmeru」シリーズには、世界中の鶏料理との相性を追求した「Joie de Poulet ジョイ・ド・プーレ(鶏の喜び)」、チーズとの相性を重視した「 Foret de Fruit フォレ・ドゥ・フリ(果実の森)」という2アイテムがあります。

今回は「 Foret de Fruit フォレ・ドゥ・フリ(果実の森)」と白カビチーズを合わせてみました。

「Foret de Fruit」のアルコール度は13%台。白ワインとほぼ同じ程度です。よく冷やしたお酒をグラスに注ぎます。洋ナシやリンゴのような華やかでフルーティな香りをイメージしていたのですが、むしろ香りにはフルーティさとともに心地よい白カビの香りを感じます。

ということで、ソフト系のオーソドックスな白カビチーズを合わせました。
この組み合わせ、すごくいいです。

フードマッチングでは、料理とお酒がお互いを高め合う、相互の風味を合わせることで相乗効果を狙う、という相互押し上げ効果が求められがちですが、この組み合わせは違います。敢えて言えば「寄り添い型・同化型」のマリアージュです。チーズとお酒、双方が口中に存在していることを忘れてしまうくらい、お互いがお互いをうまく包み込みます。そこにはどちらが主でどちらが従、という関係性はなくなるのです。

やや低めのアルコール度もあり、お酒を口に含むとすっきりとした甘みとともに、重すぎない旨味が舌上に広がります。ワインに比べて酸味の少ない日本酒ですが、このチーズとの同化の中から、不思議なことに酸味が浮かんでくるような印象がありました。これが、次の「もうひと口」を誘います。

チーズに合わせて「Foret de Fruit」を飲むのでしたら、個人的にはあまり冷やしすぎないほうが、口中でとろけたチーズとの同化感が増すような気がしました。特に、表面の皮の部分を含まず、とろりとした内側部分とお酒を口に含むと、双方の質感、旨味、がバッチリと重なります。重なるというよりも「同化」します。

ちなみに、この「Foret de Fruit」を「キャビア」と合わせてみると。。。
なるほど、生臭いです。やはり「Khaviyar カハービア」は、あのアルコール度数、アミノ酸度でこそ「魚卵」と合うのだと、改めて納得。

ワインとは酸味バランスが大きく異なる日本酒でこそ生まれるチーズとのマッチングは、ハレの日だけのものではない、肩の力を抜いて1日の疲れを癒すための「同化型」フードペアリングでした。

食事との相性では、本来懐がとても深い日本酒ですが、今回の妙高酒造「Montmeru」のように、酒造りの時点から、料理とのペアリングをイメージしながら醸されたお酒で食事を楽しむのも面白いものです。

今回ご紹介しました、新潟県上越市の酒蔵「妙高酒造」とリーデルが、日本酒版グラス・テイスティングを行います。
複数の形状のグラスで飲み比べながら、作り手の方々から直接お話を伺えるチャンスです。
日本酒の奥深い世界、またその新しい楽しみ方を存分に堪能してください。

https://www.riedel.co.jp/whatsnew/event/2016/0618_myokoshuzo

  • 庄司 大輔Daisuke Shoji
  • (社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ/リーデル社 ワイングラス・エデュケイター

1971年神奈川県生まれ。明治大学文学部文学科卒業、専攻は演劇学。 塾講師、レストラン勤務などを経て、1998年(社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ呼称資格取得。1999年にボルドー地方サンテミリオンの「シャトー・トロットヴィエイユ」で学ぶ。2001年リーデル・ジャパン入社、日本人初の「リーデル社グラス・エデュケイター」となる。リーデルグラスとワインの深いつながりやその機能を、グラス・テイスティングを通して広く伝えるため、文字通り東奔西走している。
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