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2017/07/19

Column

ビールだけじゃない!生産地別ドイツワインの特徴

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ドイツといえば、ビールの印象が強いかもしれませんが、ドイツは、ワイン生産国としても歴史と伝統を誇っています。

さまざまな特徴をもつ、ドイツワインの生産地をご紹介します。

ドイツのワイン生産地13

ドイツはぶどう栽培の北限、といわれています。

ワイン生産地は全部で13カ所。ほとんどが、国土の南部・南西部のライン川本流と支流域に集中しています。

ドイツワインというと、リースリング種、白というイメージが濃厚ですが、それぞれに、ユニークな個性を発揮しながら、ワイン造りに取り組んでいます。

エレガントな酸味が魅力

モーゼル

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ドイツワインの著名な産地モーゼルは、およそ550kmにもわたる流域に展開しています。ラベルには、支流であるザール川、ルーヴァー川も含めて、モーゼル・ザール・ルーヴァーと記されることも。

モーゼル川は大きく蛇行しているため、ぶどう畑はその蛇行に沿って展開します。寒冷地であるドイツでは、川からの太陽光の反射や、川沿い斜面の日当りのよさなども、良質なぶどうを育む重要な要素となります。

モーゼルといえば、なんといっても潑溂とした美しい酸をもつリースリングが有名です。キリリと引き締まったその味わいは、魚介や鳥料理と素晴らしいマリアージュを見せてくれます。

モーゼル地域のワインの多くは、グリーンのガラスを用いた首の長いスマートなボトルに入れられています。

黄金色のワインを生み出す最高峰の産地

ラインガウ

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タウヌス山付近では、ライン川は西に向かって流れます。その山腹は川の北岸に展開しており、したがってその山腹に開かれたラインガウのぶどう畑はそのほとんどが南向き。川の反射、豊富な日照、そして山によって冷たい北風が遮られるという好条件が重なるこの地。さらに、黄土、粘板質砂質などで構成される土壌は、リースリングには最適といわれ、古くからドイツ最高峰のワインが造られてきました。

ライン川流域のワインの多くは、ブラウンのガラスを用いた、首の長いスマートなボトルに入れられています。

口あたりのよいワインを育む最大の産地

ラインヘッセン

ラインヘッセンは、ドイツ最大のワイン生産地で、口あたりの良いワインが多く生産されています。

生産地域は大きく、ライン川流域のラインフロントと、その背後に展開するヒューゲルラントに分けられます。

この地は長らくシルヴァーナという品種が多く栽培されていました。シルヴァーナはその頭文字のSにかけて一名「セクシーシルヴァーナ」などとも呼ばれ、リッチで魅惑的な味わいのワインに仕上がります。

近年では、ドイツの代表品種ともいうべきリースリング、花のような香りとやさしい口あたりが魅力のミュラー・トゥルガウ、力強い旨味をもつバフース(酒神バッカスの意)など、さまざまな品種のワインが生み出されています。

この地域のワインも多くが、ブラウンのガラスを用いた、首の長いスマートなボトルに入れられています。

風光明媚な観光名所

ミッテルライン

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ミッテルラインはライン川中流域のおよそ100kmに展開する産地。斜面が多く、豊富な日照により、優れたぶどうが育まれます。多くがリースリングで、やわらかな印象のワインに仕上げられます。

いわゆるライン下りの名所として知られ、両岸には数多の古城がそびえ、美しい歌声で航行する舟をおびきよせ、沈めてしまうあやかしの美女ローレライ伝説の舞台でもあります。

こちらもライン川流域なので、ブラウンのガラスを用いた、首の長いスマートなボトルがもっぱらです。

男らしい味わいはボトルのかたちにも

フランケン

フランクフルト東の丘陵地帯、マイン川とその支流の沿岸斜面に展開するフランケン地域は、寒暖の差が激しい大陸性気候。土壌も石灰岩を多く含み、他の生産地とは異なる特徴を持っています。

その味わいは力強く、辛口で、ミネラル豊富。「セクシー」と女性にたとえられるシルヴァーナも、フランケンのテロワールに育まれるとしたたかに男性的に仕上がります。ボトルのかたちも特徴的なボックス・ボイテル(雄山羊の睾丸)——あたかもワインのスタイルを標榜するかのような、なかなか男らしいかたち、なのです。

岩山をぬって広がるぶどう畑

ナーエ

ナーエはラインヘッセンとモーゼルに挟まれた地域で、ぶどう畑はナーエ川およびその支流の両岸急斜面に多く展開しています。

土壌は火山活動に由来し、岩山が多いことも特徴です。

ナーエでは、ミュラー・トゥルガウ、リースリング、シルヴァーナ、ショイレーベ、ケルナー、バフースなど多くの品種が植えられ、多彩なワインが造られています。

この地域のワインは、首の長いボトルに入れられることがもっぱらですが、そのガラスの色は決められていませんでした。しかし近年、ナーエの生産者がロイヤルブルーガラスを採用し、注目を集めています。

ドイツではめずらしい赤ワインの産地

アール

ボンの西南部に、アイフェル山系の渓谷に展開する地域で、アール川中・下流域の両岸およそ25kmに、ぶどう畑が並んでいます。

いったいドイツでは白ワインの生産がメインですが、この地域は赤ワインの生産がおよそ7割を占めています。

豊富な日照と、火山性の土壌が赤ワイン用ぶどうに適しているのでしょう。

温暖な気候に由来する果実味が魅力

ファルツ

北をラインヘッセン、南をフランスのアルザスに接するファルツは、ドイツ第2のぶどう栽培面積を誇る地域。

秀逸なリースリングの産地として知られ、温暖な気候に由来する桃や洋梨、柑橘系の果実味が特徴です。

さまざまなワインを育む宝石箱

バーデン

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ドイツのワイン生産地の最南端バーデン。そのぶどう畑は、ライン川に沿って北はハイデルベルグから南はボーデン湖まで、南北およそ400kmにわたって展開しています。

したがって、気候や土壌も一様ではなく、ぶどうもさまざまな品種が栽培されています。

総じて、酒質が高く、白、赤ともにしたたかな辛口にワインが多い印象があります。また、シュぺートブルグンダー種(ピノ・ノワール)を用いて造られるロゼワイン、ヴァイスヘルプストも魅力的です。

ボトルに統一的な特徴はありませんが、ユニークなのは、この地域のバーデン・バーデン郊外にある、ノイヴアイテー、ウムヴェーク、ファルンハルト、シュタインバッハの4つの村で造られるワインに関しては、例外的にフランケン地域のボックス・ボイテル瓶の使用が認められています。これは、かつてこれらの村がフランケンの領主によって治められていたことに由来する特例です。

ドイツ最大の赤ワイン産地

ヴュルテンベルグ

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ネッカー川と、その支流の斜面に展開するヴュルテンベルグは、ドイツ最大の赤ワインの産地。地元品種であるトロリンガー種やレンベルガー種、国際品種であるシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)種などを用いて、個性的なワインを生産しています。その味わいは、フルーティーかつスパイシー。独特の風味を持ち、濃厚な料理ともよく合います。

もちろん、白ワインも造られており、したたかな辛口のアイテムがもっぱらです。

「春の園」に育まれたふくよかなワイン

ヘシッシェ・ベルクストラーセ

ハイデルベルクの北に位置するヘシッシェ・ベルクストラーセは、「ドイツの春の園」と呼ばれるほど温暖な土地柄。

この温良の地で育まれた、リースリング、ミュラー・トゥルガウ、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー、シュペートブルグンダーなどの品種は、ふくよかな果実味と、やわらかな酸味を特徴とします。

世界最北端のワイン産地

ザクセン

ワイン産地としては世界最北端、北緯51.5度位置するザクセン地域のぶどう畑は、エルベ川に近接する南向き斜面に展開しています。

総面積はおよそ400ha、ドイツのワイン生産地の中では最小。旧東ドイツに所属していた地域です。

しかし、その歴史は古く、ぶどう栽培の歴史を文献史的に辿ると、12世紀にまでさかのぼることができます。

黄土層に花崗岩や斑岩など火山系土質の混じる土壌は、上質なリースリングを育み、また、シルヴァーナやミュラー・トゥルガウなどからも質の良いワインが造られます。

伸びしろ広き注目の産地

ザーレ・ウンストール

ザーレ川と支流のウインストール川流域に展開するザーレ・ウンストール。

旧東ドイツに所属していた地域で、ドイツ統一以後、着々とぶどう畑を増やし続けています。

土壌は石灰質。ミュラー・トゥルガウやシルヴァーナなどの品種が栽培されています。また、ゼクトと呼ばれるスパークリングワインも人気です。

爽やかなドイツワインを楽しもう

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ドイツワインには、さまざまな生産地と種類があります。

もし、すべてに通底する特徴をあげるとすれば、「エレガントさ」でしょうか。

爽やかで上品な酸は、和食にもよく合い、また疲れた心身を癒してくれる効果も。ドイツワインをお供に、優雅なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか?

  • 髙山 宗東muneharutakayama
  • ワインコラムニスト・歴史家・考証家・有職点前(中世風茶礼)家元

専門は近世史と有職故実。歴史的観点を踏まえてワインのコラムなどを執筆。
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