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2017/08/10

Column

世界各地の伝統的なマリアージュを楽しむ——その1・アルゼンチン編

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世界各国のワイン産地には、その土地ならではの伝統料理があり、ご当地ワインと独自のマリアージュが楽しまれています。

各国の伝統料理とご当地ワインのマリアージュをご紹介するこの企画、第一弾は独自のワイン文化をもつ南半球の名産地アルゼンチンです。

アルゼンチンならではの品種「マルベック」

アルゼンチンの赤ワインといえば、代表品種はマルベック。

マルベックは本来、ボルドー系のバイプレーヤー的な品種です。

ところが、アルゼンチンのテロワールで育むと、力強く繊細で、ストラクチャーに優れた赤ワインとなり、マルベックのポテンシャルが見事に開花します。

マルベックの実力が解る、牛肉とのマリアージュ

アサードの魅惑の香り

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以前、アルゼンチンを訪問した時のこと。

宿泊施設があるワイナリーに泊まり、旅先の常で明け方に目を覚ますと、どこからか香ばしい匂いが漂ってきます。

散歩がてら庭に出て、香りの元に近づいてゆくと、一隅に大きな焼き場が据えられ、何やら炭火で焼かれている様子。炭火の上に校門を横倒しにしたような大きな焼き網がかけられ、牛を三枚におろしたような大きな肉の塊がゴロゴロと並べられています。びっくりして、焼いているおじいさんに「朝ご飯用ですか?」と訊くと、「いやいや、ランチ用だよ」と。

あまりに大きな塊のため、朝から作業にかかって、ちょうどお昼ごろに焼きあがるというのです。

これが、大きな塊の牛肉に岩塩を擦り込み、ゆっくりと時間をかけて炭火で焼き上げるアルゼンチンの名物「アサード」です。

独自のワイン文化を持つアルゼンチン

エンパナーダ×マルベックロゼ

焼き網の隅には、ブーダン(フランス料理の豚の腸詰)のような黒いソーセージや、半身のチキンなども並べられています。これらすぐに焼きあがる小品は、朝ご飯のおかず。もちろん、これらも絶品の美味しさです。思わず朝から飲みたくなるほどで、流石はワイン産地だけあって、ドリンクバーにはスパークリングワインも冷えています。こうなると、お昼が待ち遠しくて仕方ありません。

そして、いよいよお昼の時間になると、意外にもグラスに注がれたのはロゼワイン。そして、アサードが並ぶのかと思いきや、まずテーブルに並んだのはたくさんのエンパナーダです。

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エンパナーダは、肉、じゃがいも、香辛料などの餡を小麦粉とラードの生地で包んで、焼いたり、揚げたりしたもので、さまざまなヴァリアントがありますが、この時のそれは、ちょっと大きめの揚げ餃子といったニュアンス。

ロゼは、マルベックから造られた、キリリと引き締まり、果実の旨味も芳醇な、端麗、玲瓏な辛口ワインで、エンパナーダに合うことといったらありません。

アサード×マルベック

さて、いよいよ真打ちは、朝方からじっくりと焼きあげたアサードです。

大きな塊のまま運ばれ、「お好きな部位を」と促され、切り分けていただきます。

アサードに用いられるアルゼンチンの牛肉は、赤身が多く、しかし噛み締めるほどに旨味と肉汁がジュルジュルと溢れてきます。いってみれば、コラーゲンの塊のような食べ心地。多くの場合広大な荒野で飼われている牛たちは、餌を求めて延々と歩きまわるため、しっかりと筋肉がつきます。この筋肉に由来する旨味なのです。たっぷりと栄養が与えられ、肉にもサシが入る日本の銘柄牛とは、また違った世界観を持った味わい。その肉に、アンデスの恵みである岩塩を擦り込み、炭火で焼き上げた美味しさは、シンプルにして、究極的な美味しさでした。

その牛肉と、濃厚にしてクリアなマルベックの相性は絶品のひと言です。

日本ならではの進化形マリアージュのご提案

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しかし、残念ながら、アルゼンチンの牛肉は日本に輸入されていないため、国内で味わうことはできません。

そこで、日本ならではの、マルベックと牛肉のマリアージュをひとつ、ご提案いたします。

ひと口にマルベックといっても、造り手やテロワールによって、その個性はさまざま。それは、一頭の牛からとれた肉であっても、部位によって味わいが異なるのと同じです。

そこで、複数種類のマルベックをテイスティングし、カルビ、牛タン、ハラミ、ロース、レバー、ホルモンなどの焼肉の各部位に、同品種異アイテムをピンポイントマリアージュさせてみてはいかがでしょう?

たとえば、〈トリベント〉のトリベント・リザーブは、果実味豊かで、適度なスパイシーさもあり、しっかりとしたストラクチャーを持ちながらも親しみやすい味わい。牛タンやカルビに合わせると、タレの甘味を巧くフォローしてくれるでしょう。タレにほんの少し、このワイン加えても素敵なマリアージュになります。

また、メンドーサ州の〈ヴィーニャ・ドニャ・パウラ〉の、ドニャ・パウラ・マルベックは、果実味豊かでスパイシー。濃縮感も高く、複雑なストラクチャーをたたえているため、レバーとは相性抜群です。

また、フランスの著名なシャンパンメーカー〈モエ・エ・シャンドン〉がメンドーサ州に立ち上げた〈テラザス・デ・ロス・アンデス〉のレゼルヴァ・マルベック。ココアやベリーを髣髴とさせる濃厚で複雑なニュアンスには、ハラミやロースのジューシーな脂がベストマリアージュしまう——という按配。

数種類のマルベックをテイスティングし、微妙に異なる味わいや香りを分析すると、品種への理解も深まり、食の楽しみもさらに深くなることでしょう。

  • 髙山 宗東muneharutakayama
  • ワインコラムニスト・歴史家・考証家・有職点前(中世風茶礼)家元

専門は近世史と有職故実。歴史的観点を踏まえてワインのコラムなどを執筆。
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