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2017/09/13

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貴腐ワインの最高峰<シャトー・ディケム> その歴史と味わいの特徴とは

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その歴史は中世にまでさかのぼり、ボルドーの中でも古い歴史を誇る〈シャトー・ディケム〉。

世界最高峰の貴腐ワインの生産者として有名なシャトー・ディケムの歴史と、貴腐ワインに適したグラスをご紹介します。

テロワールと人間の叡智が融合した「黄金の雫」

極甘口ワイン「貴腐ワイン」——その奇跡のワインを生み出す条件を整えた場所は、世界でも限られています。その最高峰と謳われるのが、フランスはボルドー地方、ソーテルヌ地区唯一の特一級格付畑〈シャトー・ディケム〉です。

〈シャトー・ディケム〉の歴史

蜂蜜酒への憧れ

古代より、永遠の理想郷「エデンの園」からは4本の大河が発していると考えられました。

蜜の川ピソン、乳の川ユーフラテス、ワインの川ギホン、オリーヴ油の川ティグリス……古代人にとって、これらの良き食材に恵まれた土地こそ、まさに天国と呼ぶに相応しかったのでしょう。その第一に、蜜の川が数えられていることはメタファーとして重要なことと考えられます。

そんな嗜好を示すかのように、古代~中世の西欧人にとって至高の酒は、実はワインではありませんでした。

蜂蜜を発酵させて造った「蜜酒」。砂糖が普及していなかった時代、稀少な蜂蜜を用いて醸造した極甘の酒こそ、酒の王に相応しい味わいとされたのです。

自然の摂理への挑戦

「稀少な蜂蜜の代わりにぶどうを用いて蜜酒の味わいを再現したい」——工夫され、生み出されたもののひとつが貴腐果を用いた「貴腐ワイン」であることは、このブログでも以前にご紹介いたしました。

わけてもフランスはボルドー、ソーテルヌ地区唯一の特一級格付畑〈シャトー・ディケム〉は、世界三大貴腐ワインのひとつとして最高峰の賛辞をほしいままにしています

ぶどうから蜂蜜の味わいを造り出すのは、自然の摂理への挑戦、とさえいって過言ではありません。しかし、〈シャトー・ディケム〉の醸造行程には、至るところに自然と融合する人間の叡智が光ります。

なだらかな丘陵に砂礫質土壌が広がるソーテルヌ地区。ぶどうの収穫期である秋になると、明け方この一帯は霧に包まれます。そして午後、陽光が照りつけると、「高温多湿」というボトリティス・シネレア菌にとって理想的な繁殖環境が整うのです。これほどボトリティス菌の繁殖に恵まれたテロワールは、世界的にも稀有だといいます。

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通常、果実に菌が付着ことは好ましいことではありませんが、果皮を破らずに果肉の水分だけを排出し糖度を高める「貴腐」と呼ばれる効果をもたらすボトリティス・シネレア菌に限っては、その例にあてはまりません。その甘く熟した貴腐果からは、蜜酒を凌ぐほど素晴らしいワインができるのですから。

テロワールと、ぶどうにたまたま付着する菌の作用――この偶然ともいうべきハプニングを最大限に利用したものが、ソーテルヌ地区の貴腐ワイン。その最高峰が〈シャトー・ディケム〉なのです。

至高のワインのレシピとは?

〈シャトー・ディケム〉の畑には、セミヨン種が約75%、ソーヴィニョン・ブラン種が約25%植えられています。その年の天候、ボトリティス・シネレア菌の繁殖状況、果実のコンディションを勘案しながら、アッサンブラージュし、ヴィンテージの個性を最大限に活かす「造り」に全力が傾けられるのです。

稀有のテロワールのみならず、人間の叡智なくしては、〈シャトー・ディケム〉は誕生し得ません。

最良のぶどうしか使わない〈シャトー・ディケム〉では、通常一本の樹からグラス一杯分しか収穫できないといわれますが、菌のつきが悪ければそれさえ確保できないこともままあります。人間の叡智と自然、そして偶然が織り成す黄金の雫は、まさに「至高のワイン」と呼ぶに相応しい稀少なアイテムなのです。

〈シャトー・ディケム〉×リーデル「ソーテルヌ」グラス

その昔、贅沢を極めた王侯貴族たちは、なんと〈シャトー・ディケム〉を生牡蠣とマリアージュさせたといいます。しかしそのマリアージュ、トライしてみると現代人の味覚にも驚くほどよく合うのです。

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〈シャトー・ディケム〉には、単に甘さのみならず、甘味をべとつかせないほどに強靭な、酸味やミネラル感などの「旨味」がたたえられています。ことに酸味のしたたかさは、他のワインの追随を許さないほど際立っています

ただ甘いだけではなく、甘さと同じレヴェルの酸味や、旨味があるからこそ、それぞれの味わいが高いレヴェルで均衡し、円熟した旨味を輝かせるのです。

リーデルの「ソーテルヌ」グラスは、甘さだけでなく、酸や旨味がバランスよく感じられる構造になっています。

もし、〈シャトー・ディケム〉を飲む幸運に恵まれたら、是非ともリーデルの<ソムリエシリーズ>『ソーテルヌ』グラスをおためしください。まさに最良の状態で、「黄金の雫」を堪能することができるでしょう。

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  • 髙山 宗東muneharutakayama
  • ワインコラムニスト・歴史家・考証家・有職点前(中世風茶礼)家元

専門は近世史と有職故実。歴史的観点を踏まえてワインのコラムなどを執筆。
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