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2017/09/29

Column

ワインを長期保存する際に、注意しておきたいこととは?

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ワインは温度や湿度に大きく影響を受けやすいもの。

理想的には、ワインセラーに保存しておくと安心ですが、なかなかそうはいかない場合も。ワインセラーがない場合には、どんな保存方法があるのか?考察してみましょう。

長期保存するワインとは?

「古いヴィンテージのワインが高額で落札された」――などと報道されることがあるので誤解されがちですが、ワインは古ければ古いほど良い、というわけではありません。

赤ワインには皮由来の渋味成分「タンニン」が含まれています。造られたばかりのワインに含まれるタンニンは、まだ若く溌剌としているため、飲んだ際に「渋い」と感じられがちです。年月を重ねることで、タンニンの味わいはまろやかに変化してゆき、ワインの味わい全体が奥深くなります。これが「熟成」です。

したがって、タンニンを含まない白ワインや、そもそも果実の段階で充分に熟しタンニンがまろやかになっているニューワールドの赤ワインなどは、しいてボトルの状態で熟成させる必要はない、ともいえるのです。

ワインの保管について考える

家飲み用のワイン

ワインセラーがない状況で、ワインを保管する場合、目安になるのが3ヶ月という期間です。夏の暑い盛りだったら、冷蔵庫に入れるなり、最も長い時間冷房をかける部屋の、涼しいところにおいておくのがベスト。

人間が暮らす普通の環境で、3ヶ月以内に飲んでしまうのであれば、ワインが大きくダメージを受けることはないでしょう。

冬場は、暖房の影響を受けにくいところに保管して、6ヶ月くらいが目安となります。買ってきたワインは概ね3ケ月くらいで飲みきる……というローテーションを作っておくと、まず間違いはありません。

長期保存で配慮するポイント その1 光

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ワインを長期保存する場合、配慮しなければならないポイントの第一は光です。

ワインボトルを観察すると解りますが、長期の保存に耐えるワインボトルは、厚く、黒っぽい色のガラスが用いられています。

ワインは、特に太陽光を受けると変質しやすいため、なるべく影響を受けないように配慮されているのです。

したがって保存場所も、光の差しにくい、暗い場所が理想的——ということになります。

長期保存で配慮するポイント その2 温度

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ワインセラーはおおむね12℃〜14℃くらいに設定されることが多く、ワインの長期保存にはこれくらいの温度が理想的といえます。しかし、ワインセラー最大の優位性は、温度そのものより、「温度変化がほとんどない」ということにあります。

温度という視座から見たワイン最大の敵は、「温度変化」です。つまり、「人がいなければ冷え込み、人がいる時は温められる冬のリビング」などは、ワインがもっとも疲弊してしまう環境なのです。

したがって、ワインセラーの無い環境で、ワインを長期保存させるには、「家の中でなるべく温度が変わらない場所」を探すとよいでしょう。

長期保存で配慮するポイント その3 湿度

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「だったら、冷蔵庫に保存すれば?」と、思われるかもしれませんが、単に冷すだけの冷蔵庫には、大きな問題があります。

冷蔵庫の中は、思いのほか乾燥しているもの。湿度の足りない環境では、コルクは痩せ、酸素の出入が激しくなりすぎて、結果酸化が進みすぎてしまうことがあるのです。

ボトルを寝かせて保存するのも、コルクに適度な湿り気をキープするため。

したがって、家の中でワインを保存する際は、「乾燥しすぎていない場所」を探すことが肝要なのです。

これらの条件を満たす場所は?

光が差し込まず、温度が一定で、適度に湿度もある場所——家の中でこうした条件を満たす場所を探してみると、押し入れ、納戸、床下収納、トイレ、下駄箱などなど、さまざまな候補があがりますが、どれにも一長一短があります。他のものの匂いの影響を受けない場所であることも、保存の時に配慮したいポイントです。

もうこうなったら、庭に大きな穴を掘り、頑丈なケースに入れて、埋めてしまうしかないな——と、ここまで考えて、ふと思い当たることがありました。

その昔、中国の紹興酒の産地では、女の子が生まれると酒を醸し、瓶に入れて地中深く埋め、やがてその子が成人し、婚礼の際に掘り出して飲んだとか。

科学に頼らずに理想的環境でお酒を長期保存しようとした場合、人間が考えることは、どうも似たり寄ったりのようです。

  • 髙山 宗東muneharutakayama
  • ワインコラムニスト・歴史家・考証家・有職点前(中世風茶礼)家元

専門は近世史と有職故実。歴史的観点を踏まえてワインのコラムなどを執筆。
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