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2015/12/07

Column

【初めてのグラス選び】シングルモルトウイスキーグラスがあるってホント?

Vol.6【初めてのグラス選び】シングルモルトウイスキーグラスがあるってホント?

ワイングラスとワインの関係は、密接で深い。ワインを選ぶようにグラスも吟味すれば、ワインの楽しみはいっそう広がる。今回はシングルモルトウイスキーを楽しむためのグラスが登場。ウイスキーのスペシャリスト土屋守氏と、リーデルチーフグラスエデュケイターの庄司大輔氏がウイスキーグラスを説く。
今回の対談
土屋守氏と庄司大輔氏

今回のテーマ

シングルモルトウイスキーグラスがあるってホント?

シングルモルトウイスキーグラス選びの基本

シングルモルトウイスキーにも専用グラスが必要!?

蒸留酒の中でもウイスキーは、琥珀色の輝きと心を引きつける芳醇さが魅力。飲み方もストレート、ロック、水割りといろいろだ。そこで「リーデル」のチーフグラスエデュケイターの庄司大輔氏に、今人気が高まっているシングルモルトウイスキーとマッチするグラス選びについて聞いた。
「今回の対談で興味深かったのは、タンブラー。ワインではご法度の形状ですが、ウイスキーを注いですぐに香りが立ちやすいメリットがあることを、あらためて感じました」
刺激を強めに感じやすいため、ロックや水割りなどが適しているだろう。テイスティンググラスは、お手入れも含めて実践的なグラスという印象。
「このグラスはウイスキーが持つ各要素を取りに行く感じ。シングルモルトウイスキー専用グラスは、自然に現れる感じです」という土屋氏の言葉はさすが第一人者ならでは。その専用グラスは、生産者とのワークショップで選ばれた形状で、香りはもちろん、舌上で感じる柔らかいテクスチャーは格別。グラス選びでシングルモルトの新たな魅力を探ることも、一つの楽しみになるはずだ。

グラスが深い香りを引き出す

生産地や蒸留所ごとにキャラクターが異なる、シングルモルトウイスキー。その個性を楽しむには、グラス選びも大きなポイントとなる。
「生産者とのワークショップで選定されたシングルモルトウイスキー専用グラスは、スモーキーなピート香などの特徴的な香りを、グラス内に再現します。また下唇の丸みに沿うような反り返った飲み口は、ウイスキーを極めて柔らかく舌の上(舌先よりも少し奥に入った辺り)に導く。そのため40度を超えるアルコールを感じさせずに、トロッとしたテクスチャーと甘味を、やさしくじっくりと感じさせてくれます」
そのウイスキーを、どの程度の時間をかけて、どのように楽しみたいか。グラス選びの段階から飲み手を楽しませてくれるのも、シングルモルトウイスキーの奥深さなのかもしれない。

シングルモルトウイスキー

単一蒸溜所の原酒だけで造られたモルト(麦芽)ウイスキーが「シングルモルト」。蒸留地それぞれの気候風土まで感じられる独自の味わいが表現されている。蒸留所の個性がストレートに楽しめるのが魅力。

シングルモルトウイスキーのグラス選びとは

庄司:今日は、シングルモルトウイスキーに適しているグラスを見ていきます。グラスによってどのように味わいや香りが変わるのか、ウイスキーの第一人者である土屋守さんと一緒に、その世界を体験したいと思います。まずはシングルモルトとは何か。奥深い世界の一端を紐解いていただきましょう。

土屋:ウイスキーの中でも、1カ所の蒸留所で造るものをシングルモルトと呼びます。1000の蒸留所があれば1000のシングルモルトがあり、みな個性が違います。これに対するのがブレンデッドウイスキーで、2カ所以上の蒸留所のウイスキーをブレンドしたものになります。こちらのほうが流通量は多いですね。またモルト(大麦)以外に、ライ麦やトウモロコシを使ったものをグレーンウイスキーといいます。これらの中でもシングルモルトは、蒸留所の個性が強く出ますし、唯一無二の香りと味わいが楽しめるのが魅力です。

庄司:蒸留所は、ワインでいうシャトーに当たるのですね。

土屋:蒸留所を取り巻く環境すべてが、シングルモルトに反映されます。だから興味が尽きないのです。またほかのお酒と違い、シングルモルトは10年、20年、30年と樽で熟成させるという点で、何よりも樽からの影響が色濃く反映されますね。

庄司:土屋さんは、シングルモルトを飲む時はどんなグラスを選びますか?

日本酒のグラス選びとは

土屋:仕事で試飲する時は、専用のテイスティンググラスを使います。小ぶりで、香りをとどめるための小さなふくらみがあり、これに30ミリほどシングルモルトを入れて味わいます。まず外観の輝きを見るので、グラスは透明で装飾がありません。そして清澄度、粘性をしっかり見ます。粘性からはアルコールのボリュームがわかります。アルコールが40度と70度のものを比べると、グラスに流れるレッグの早さや量が違いますよ。

庄司:ワインの試飲と共通項が多いですね。香りはどのように取りますか?

土屋:香りはアルコールに溶け込んでいますが、シングルモルトのアロマには、揮発しやすいものと揮発しにくい成分があります。揮発しやすいアロマは1〜2分で消えてしまうので、その前に香りをとらなくてはなりません。次に口に含んで飲み込みます。ワインの試飲とは違い、吐き出しません。残り香が口中や鼻腔に抜けていき、この香りから個性が読み取れます。実際に、私たちがいつも使っているテイスティンググラスで試飲してみましょう。

庄司:なるほど、ウッディな感じやナッツ、スパイスやスモーキーさなど、いろいろな香りが溢れるように立ち上ってきますね。このようにストレートで飲むと、香りや味わい、アルコールの強さがはっきりわかりますし、飲んだ後の香りの余韻もとても長いです。

<ヴィノム> タンブラー、<ヴィノム> シングル・モルト・ウイスキー

土屋:では、グラスを変えてみましょう。シングルモルト用に作られたものは、香りをホールドする力、いわゆる滞留時間が長く、またウイスキーが口の中に細く入ってくるため、味わいの印象が先ほどと違ってマイルドですね。

庄司:はい、とても柔らかいですね。すぼまりもなく、飲み口がやや反り返った形状が特徴ですね。飲み口が反り返っていることで、ウイスキーが口の中に一気に入るのではなく、細い筋のようになって流れ込みます。また意外にも、舌先よりも少し奥辺りに液体が導かれるので、舌先で感じるようなピリッとした刺激は和らいでいます。

土屋:タンブラータイプを試してみましょう。飲んだ時に、舌先からガツンとインパクトのある味わいがきますね。またグラスの底面積が広いので、注いだ瞬間からアロマが大きく広がります。香りにそそられる、そんな印象です。

庄司:香りは時間とともに弱まっていきますが、ロックや水割りで飲むのには適していますね。余談ですが、西部劇の映画などで、カウンターに打ち付けるようにしてショットグラスであおるシーンを見かけることがありますが、あれはどうなのでしょうか?

土屋:開拓時代のアメリカでは、酒が美味しくなかったのだと思います。だから、味わうのではなく勢いをつけて飲み込んでいた、そんなところでしょう。シングルモルトをあのように飲んだらもったいない!(笑)

庄司:そういうことでしたか。じっくりと美味しく味わうほうが、私も好きです。

土屋:せっかく楽しむなら、時間をかけて心ゆくまで味わってほしいですね。以前あるバーで、シングルモルトを大きなワイングラスで出してくれました。多彩な香りを存分に楽しもうという趣向でしょう。ふだんとは違う驚きと感動もありましたね。シングルモルトの楽しみ方は十人十色。どんなグラスと組み合わせるとシングルモルトがもっと美味しく感じられるのか、そんな新しい発見をする楽しみもあります。

庄司:シングルモルトの世界は奥深いですね。さらに探求してみたくなりました。

今回の座談で話題になった「お酒とグラスの相性」を体験できる店舗はこちら

青山本店大阪店
ワイン王国

ワイン王国

この記事は2015年12月5日(土)発売「ワイン王国 No.90」に連載されました。
こちらからPDFファイルをダウンロードしていただけます。
ワイン王国 PDF(2.9MB)

  • 庄司 大輔Daisuke Shoji
  • (社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ/リーデル社 ワイングラス・エデュケイター

1971年神奈川県生まれ。明治大学文学部文学科卒業、専攻は演劇学。 塾講師、レストラン勤務などを経て、1998年(社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ呼称資格取得。1999年にボルドー地方サンテミリオンの「シャトー・トロットヴィエイユ」で学ぶ。2001年リーデル・ジャパン入社、日本人初の「リーデル社グラス・エデュケイター」となる。リーデルグラスとワインの深いつながりやその機能を、グラス・テイスティングを通して広く伝えるため、文字通り東奔西走している。
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