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2018/10/10

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ニューワールドのカベルネ・ソーヴィニヨンを、5種類のカベルネ系グラスで飲み比べる

グラスでひもとく品種と造り

(リーデルの代表的なカベルネ・ソーヴィニヨン用のグラス5種類)

リーデルのグラスは、ぶどう品種やワインのスタイルによって、そのワインの造り手が志向した味わいを、できるだけ忠実に表現できるよう、最適なグラス形状が選定されています。

たとえばカベルネ・ソーヴィニヨンという品種は、小粒で果皮が厚いという特徴をもっています。果皮の比率が高いため、皮と実の間にたたえられた旨味成分が多く、果実味、酸味、渋味が絶妙に調和したワインとなります。

ワインの生産地に付随する土壌や気候、生産者ごとの美意識や醸造方などの諸条件が変動したとしても、ワインから明確に感じることのできるぶどう品種の特徴、これが、僕たちリーデルがグラス開発での大きな指標にしている「ぶどう品種のキャラクター」です。この、ぶどう品種のキャラクターと、それを再現するグラスのピントがピタリと合えば、前述の土壌や気候、そして生産者のメッセージが、霧が晴れるようにグラスの中から姿を現しやすくなるのです。

リーデル、『カベルネ・ソーヴィニヨン』グラス開発史

(<ソムリエ>ボルドー・グラン・クリュ)

リーデルがカベルネ・ソーヴィニヨンに対応するグラスとして、最初に開発したのが、<ソムリエ シリーズ>の『ボルドー・グラン・クリュ』

ボルドーの偉大なワインがもつ比類ない個性を正確に表現するために、卵型のボウルの容量は860ccと巨大。絶妙になだらかな曲線を描く大きなボウルで充分な呼吸空間をとることによって、さまざまな香りの層が解きほぐされて、「荘厳」といって過言ではないほどのボルドーワインの複雑で妖艶、気品がありつつ繊細な風味を堪能することができます。

次に生まれたのが、マシンメイドの<ヴィノム シリーズ>の『カベルネ・ソーヴィニヨン(ボルドー)』です。

(<ヴィノム>ボルドー/右から2つ目)

『ボルドー・グラン・クリュ』に比べれば、容量として約30%小さいながらも、十分に大きなボウルと、なだらかな曲線がつくるゆるやかなすぼまりで、複雑で芳醇なワインの香りを解きほぐし、開かれた香りを鼻先へといざないます。また、ゆったりとしたすぼまりの大きな口径は、ワインをゆっくりと舌の中央付近へと導き、その後にふわりと横へと広げ、厚みあるボディと気品ある酸味、そして心地よい渋味を堪能できるボウル形状となっています。

<ソムリエ シリーズ>『ボルドー・グラン・クリュ』の卵型の形状を引き継ぎながら、マシンメイドによってコストパフォーマンスを確立。豊かに食事を楽しむための必須アイテムとなりました。

(<エクストリーム>カベルネ/中央)

また、2000年の発売当時に大きな存在感を示していた、果実味豊かで、樽のニュアンスも濃厚なニューワールドのカベルネ・ソーヴィニヨンに対応するように開発されたのが、<エクストリーム シリーズ>の『カベルネ』です。ボウルのエラが張ったダイヤモンド型のボウル形状には、複雑で芳醇な香りを解きほぐし、渋味を和らげ、厚みあるボディが存分に堪能できる、という効果があります。

(<ヴィティス>カベルネ/左から2つ目)

さらに、美しい引き脚が特徴の<ヴィティス シリーズ>の『カベルネ』は、エクストリームのダイヤモンド型を引き継ぎながら、視覚的にエレガントなニュアンスを加えたライン。コストパフォーマンスの良さのみならず、品格をたたえたニューワールドのカベルネ・ソーヴィニヨンに相応しいグラスです。

(<パフォーマンス>カベルネ/左)

そして、この秋(2018年)に発表された<パフォーマンス シリーズ>『カベルネ・ソーヴィニヨン』グラスは、いわば卵型とダイヤモンド型の融合型。ニューワールドの新たな潮流である「抑制の効いた、エレガントなカベルネ・ソーヴィニヨン」にぴったりのアイテムです。かすかに波打つボウル側面の視覚的効果も魅力的です。

こうしてみると、グラスのコンセプトからも、ここ50年ほどのワインの潮流……カベルネ・ソーヴィニヨンのスタイルの変遷が窺えます。

 

話題になりすぎて市場から消えた「幻のワイン」

さて今回は、2017年の暮れに日本で評判となったニューワールドのカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインを、リーデルのさまざまなグラスで飲み比べてみよう、という趣向です。

そのワインとは、アメリカ・カリフォルニアの造り手、ナパ・ハイランズのカベルネ・ソーヴィニヨン。

僕も大好きな『ホンマでっかTV』(フジテレビ)という番組で、明石家さんまさんが「2017年買って良かった物ベスト10」にこのワインを挙げ、「オーパス・ワンに似た味わい」とコメントされました。10分の1という価格差も加わり、放送翌日に完売。

ようやく2015ヴィンテージが入荷となり、ふたたび市場に姿を見せたこのワイン。グラスによってどのような表情がひもとかれるのか、楽しみなセッションでした。

 

栽培農家と手を携えるサステイナブルのかたち

「ナパ・ハイランズ カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2015」は、価格も良心的。(4800円税別)その秘密は、地元で古くからぶどうを作り続けてきた栽培農家との密接な関係にあります。

ワイナリーではしばしば、自社畑の比率を誇ります。しかし、カリフォルニアには、「ジンファンデルのゴッドファーザー」と呼ばれるジョエル・ピーターソン氏などがはじめたスタイルですが、自社畑にこだわらずに、栽培農家と手を携えてワイン造りをしよう、という流れがあります。

長く地元でぶどうを作り続けてきた栽培農家の知恵を活かしつつ、また優れた果実を育む古樹を守ることにも繋がり、かつコストパフォーマンスにも一役買うこの流れは、サステイナブル(持続可能農業)の究極のかたち、ともいわれています。

ナパ・ハイランズも、そうした造り手のひとつなのでしょう。

 

有名ワイナリーと環境を共にする畑で育まれた果実

2015ヴィンテージのカベルネ・ソーヴィニヨンには、2014ヴィンテージと同じく、オークヴィルとヨントヴィルのぶどうがブレンドされているそうです。

オークヴィル地区のぶどうは、オーパス・ワンから南に道を挟み広がる畑のもの。世界的知名度を誇る有名ワインと、ほとんど同じ環境で育まれた果実です。

また、ヨントヴィル地区の畑は、こちらも著名なワイナリーであるドミナス・エステートの近郊に広がっているそうです。比較的冷涼なヨントヴィルのぶどうは、上品で端正な酸が特徴。

このふたつの地区のぶどうをブレンドすることで、芳醇かつ抑制の効いた、見事な調和のワインが生まれるのでしょう。

 

グラスによってさまざまにひもとかれるワインのポテンシャル

ナパ・ハイランズのカベルネ・ソーヴィニヨン2015を<ソムリエ シリーズ>のグラスで飲むと、タンニンが存在感を示しながらも極めてやわらかく、バランスがよく、香りでは果実系以外のシダ・スミレ・炭のような静かにほの暗いイメージの香りがグッと存在感を増し、まるで旧大陸のオールドスタイルのカベルネ・ソーヴィニヨンのように感じられます。

ボルドーの銘醸が好きな方は、ぜひこのグラスで飲んでいただきたいですね。

カシスなどの黒い果実をさらに煮詰め、インクやのし梅のようなニュアンスに変化した、凝縮したミネラル感もあります。ヴィンテージ2015ですから、熟成による影響ではないはずですが、すでに妖艶とも呼べるような陰影も感じさせつつ、とてもこなれて、まろやかな印象です。

<ヴィノム シリーズ>のグラスでは、カシスのジャムやコンポートを思わせる果実味が存在感を増します。いずれにしても卵型のボウルは、旧大陸風のニュアンスを引き出す効果があるようです。

<エクストリーム シリーズ>のグラスになると、これがガラリと変わって、「ニューワールドの優秀なカベルネ」という印象になる。果実の印象も、黒から、やや黒みがかった濃厚な赤、熟したレッドベリーやチェリーのニュアンスですね。

<ヴィティス シリーズ>のグラスでは、このワインがもつ「しなやかさ」がよく解ります。特に酸が綺麗な印象が強く、赤い果実のニュアンスも、クランベリーのようなフレッシュな印象です。

<パフォーマンス シリーズ>のグラスで飲むと、はつらつとした香りといい、果実味と酸味の調和がとれた味わいといい、輝くように美味しい。「今飲んで素直に美味しい、出来の良いニューワールドのカベルネ・ソーヴィニヨン」という印象です。

ワインそのものが変わるわけではありません。どれも同じワインであることは明白なのですが、ワインのもつさまざまな要素が、グラスによってひもとかれるのです。

この驚くほどの印象の違いは、すべてボウル形状がもたらしたものなのです。

(右から、ソムリエ、ヴィノム、エクストリーム、ヴィティス、パフォーマンス)

例えば、ボウルのサイズや形状によって、ボウル内壁にできるワインの膜の表面積も変わりますし、アルコールの揮発の度合い や立ちのぼりかたが変わります。このような様々な要因が複雑に絡み合うことで、グラスのかたちが異なれば、ワインから発生するさまざまな種類の香り分子の中でも、飲み手の鼻腔が捉えることのできる香り分子の構成が、ボウル形状によりそれぞれ変わってしまうのだろうと考えられています。

しかし、同じカベルネ・ソーヴィニヨンという品種に特化したグラスでも、ひとつのワインから受け取る印象がこれほど変わってしまうとは。想像以上の違いに驚きました。

個人的には、<ソムリエ> は想像通りの方向性でしたが、期待を超える表現を見せてくれましたし、<ヴィノム> は「うん、やはり優等生だよね、君は」という全方位的満遍なさを感じさせてくれた、という印象。

一方で、エクストリームの表現がちょっと意外で、とても面白く感じましたね。グラスのコンセプトに則るならば、力強い果実味が、これでもかというくらいに前面に押し出されるのかと思いきや、このワインを飲むかぎりでは、果実味やジューシーさにフォーカスしながらも、オールドワールド的なストラクチャーがもちあげられている。逆説的ですが、この果実味の中に潜む酸やタンニンに少し光が当てられることで、むしろ力強い、あえて言えば若干の影を含んだ果実味が心地よく表現されるのでしょう。

 

名女優のような表現力を秘めたワイン

とはいえ、ワインはワインとして、一本通った筋はブレていません。決して、「違うワインのようだ」という印象ではありません。

喩えるなら、実力派の役者さんのようですね。ジブリアニメの『ハウルの動く城』では、倍賞千恵子さんが、主人公ソフィーの10代から90代までを声で演じていらっしゃいます。どれも倍賞さんの声には違いないのですが、見事に年代ごとに演じ分けられています。

たとえば、<パフォーマンス> で飲んだナパ・ハイランズは、天真爛漫な可愛い女の子(自分の娘を見ても感じますが、そんな幼い女の子でも、「タンニン」の渋みはしっかりと持っているものです)。<ヴィティス> はもう少し成長して、将来への希望も芽生えた、凛としてハツラツとした10代後半。<エクストリーム> では、社会人としての経験も少し積み重ねた、アクティブに活動する自立して行動的な女性像を。また <ヴィノム> は豊かな人生経験を活かして充実した時間を過ごす大人の女性になり、やがて歳を重ねて円熟したシルバーグレイの素敵な女性が <ソムリエ> ――などと、想像をたくましくしてしまいました。

たくさんの要素が含まれているワインだからこそ、グラスのコンセプトと見事な相関関係が成立するのでしょう。

こうした変化を踏まえたうえで、パフォーマンスからソムリエまでグラスを使いわけ、コースでお料理を楽しむという、贅沢なディナーも面白いかもしれません。

もしそんなディナーが実現したら、一本のワインを存分に堪能し尽くす楽しい夜となることでしょう。

 

関連製品(新製品)

2018年10月の新製品<パフォーマンス シリーズ>は、ワインの声を正確に伝え感性を揺さぶる究極のスピーカー。光学効果と機能的ブドウ品種別形状の次世代ワイングラスシリーズです。

<パフォーマンス シリーズ>カベルネ/メルロ(2個入)

  • 庄司 大輔Daisuke Shoji
  • (社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ/リーデル社 ワイングラス・エデュケイター

1971年神奈川県生まれ。明治大学文学部文学科卒業、専攻は演劇学。 塾講師、レストラン勤務などを経て、1998年(社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ呼称資格取得。1999年にボルドー地方サンテミリオンの「シャトー・トロットヴィエイユ」で学ぶ。2000年リーデル・ジャパン入社、日本人初の「リーデル社グラスエデュケイター」となる。演劇で磨いた肉体表現と、静かな語り口から垣間見える渋いユーモアに定評があり、ファン多数。リーデルグラスとワインの深いつながりやその機能を、グラス・テイスティングを通して広く伝えるため、文字通り東奔西走している。
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