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2012/12/10

Column

マスター・オブ・ワイン、ネッドさんのワインレクチャー。「飲みやすい」は曖昧すぎる表現だ!

先日、リーデルジャパンのスタッフ向けに、マスター・オブ・ワインのネッド・グッドウィンさんによる<ドリンカビリティ>についての特別レクチャーが行われました。

ネッドさんは、日本で活動をする唯一のマスター・オブ・ワインです。
このレクチャーの2日後には、オーストラリアでの講演を控えているという、超多忙なスケジュールのなか、私たち10名のためのレクチャーを引き受けてくださいました。

<ドリンカビリティ>ってなに?

ネッド先生 <ドリンカビリティ> ってなんですか?

「もっと飲みたいと感じることができるワインは、「ドリンカビリティが高い」ワインです。
でも、日本人がよく使う、あの「飲みやすい」という言葉とは全く異なる概念です。
「飲みやすい」はとても曖昧すぎる言葉。
大切なのは、なぜそのワインを美味しいな、もっと飲みたいな = 「ドリンカビリティが高い」と感じるかを理解すること。
そのためには、ワインの構成要素を理解することが必要です。

熱っぽいです!
滝沢先生(by スクールウォーズ)のようです。

ワインの味わい、3つの要素と3つの条件

その後は、実際にワインを飲みながらのレクチャーになりました。
1.果実の甘み
2.酸味
3.渋み

これらをワインの味わいを構成する主要な要素とすると、これらの構成要素は、おもに下記の条件によって決まってくるのです。

1.ブドウ品種の特性
2.生産地の土壌やヴィンテージによる気候などの外的要因
3.生産者によるワインメイキングの手法の選択

例えば・・・
シャンパーニュの場合、冷涼な気候や土壌の影響で、ワインとしてはとても強い酸味とミネラリティを持つのですが、「ドサージュ」という、甘いリキュールを加える工程があることによって甘みの要素が増し、強い酸味とのバランスが取れて <ドリンカビリティ> が高まります。
ここでは、「ドサージュ」という生産者の選択が、飲み手にとっての <ドリンカビリティ> に影響を与えています。

2009年のシャトー・グロリアを飲むと、温暖な気候で成熟度の高いブドウの果実味を下支えするために、新樽も使った長期の樽熟成によって、ワインにタンニンを補填しているのを感じることができます。
個人的には <ドリンカビリティ> が完璧という訳ではなく、まだタンニンがコナレていないなと感じました。

その場合、理想的には数年の熟成を待てばよいのですが 「でも今飲みたい」というときには、デカンタージュをすることで、ワインに疑似熟成を加えれば 、タンニンの角が取れて <ドリンカビリティ> は高まるわけです。

<ドリンカビリティ>が高く、感激したワイン

最後に、庄司が最も感激したワインが登場。
エゴン・ミューラー シャルツホフベルガー シュペトレーゼ 2010

イヤー素晴らしかったですね。
ワインを舌で感じると、豊かな果実の甘みがもたらす幸せの電気信号が脳みそに快感をもたらします、が、次の瞬間、ものすごい酸味とつぶつぶとしたクリスピーなミネラリティが甘みからわき上がり、この快感体験をリセットするのです。もうステムから手が離れません。
「甘い ⇒ 酸っぱい ⇒ クリスピーなミネラル感」 という快感の連鎖から離脱したくなくなってしまうのです。

庄司はこのワインから、もっとも <ドリンカビリティ> を感じたのでした。

世界で注目される<ドリンカビリティ>の概念

この <ドリンカビリティ> という考え方は、日本ではまだなじみが薄いのですが。世界では注目されている考え方なのだそうです。
リーデルのグラスとワインの関係性とも、とても関連の深い考え方だなと思いました。

いくら <ドリンカビリティの高い> ワインでも、間違ったグラスを選んでしまえば、苦みや酸味の印象だけが強くなってしまいます。
ワインとしては均整のとれたバランスでも、ワインを口に含んで身体で感じるときにはバランスが崩れしまうので、
結果的にそのワインの <ドリンカビリティが下がってしまう> のです。

逆に、ワインの <ドリンカビリティ> が完璧でなくても、デカンタをすることでタンニンをやわらげたり、グラスのチョイスによって、味わいのバランスの不足を補ったり、過分を差し引いたりできるわけですね。
みなさんも、この <ドリンカビリティ> という視点でワイン、ワインと料理、そしてワインとグラスの関係をとらえてみるのも面白いかもしれませんね。

  • 庄司 大輔Daisuke Shoji
  • (社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ/リーデル社 ワイングラス・エデュケイター

1971年神奈川県生まれ。明治大学文学部文学科卒業、専攻は演劇学。 塾講師、レストラン勤務などを経て、1998年(社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ呼称資格取得。1999年にボルドー地方サンテミリオンの「シャトー・トロットヴィエイユ」で学ぶ。2001年リーデル・ジャパン入社、日本人初の「リーデル社グラス・エデュケイター」となる。リーデルグラスとワインの深いつながりやその機能を、グラス・テイスティングを通して広く伝えるため、文字通り東奔西走している。
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