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2021/09/16

Sake

なぜ米を削るのか? 米を50%磨くのに何時間かかるかご存知ですか?「精米歩合」を知ればもっと日本酒がわかる!

前回のブログでは、お酒屋さんにずらっと並ぶ数多くの日本酒の中から、好みのイメージに近いお酒を選ぶための大きな足がかりとなる「特定名称」をご紹介しました(前回のブログ記事:「特別純米酒」って、ナニが「特別」なんですか?

例えば、そのお酒の「特定名称」に「純米」という言葉が入っていれば、それは「醸造アルコールを添加していません(アル添なし)」ということになりますし、「吟醸」とあれば「精米歩合が60%以下なんだな」という決まりになっています。

ですから、ラベルに「純米吟醸」と書いてあったら、そのお酒は「アル添なし」でいて「精米歩合60%以下」となるわけです。そうするとこのお酒は、精米歩合が70%の純米酒よりもう少し米を磨いているから、味わいは若干軽やかでしょうし、なおかつアルコールを添加していないので、かおり立ちは、この前飲んだ「大吟醸酒」よりも華やかではないかもしれないけど、旨味をしっかりと感じられるのかな・・・、と想像することもできるわけです。「特定名称」を覚えることで、だいたいそのお酒がどのようなタイプのお酒かを推測する、大きな手がかりになるわけです。

今回は「精米歩合」を理解したいと思います。「特定名称」と「精米歩合」を知っているか知らないか、で、あなたの日本酒の理解は飛躍的に変わってくるはずです。

ワイン原料のブドウは皮ごとそのまま使うのに、なんで日本酒のお米は削るんですか?

ワインをつくる場合、原料となるブドウから得られる果汁が主体となることはもちろんですが、果皮や種の存在もまた、でき上がるワインの風味の重要な構成要素になっています。例えば果皮からは、色素や香り成分が、種からはタンニンなどが沢山もたらされます。もちろん、ブドウ品種や目指すワインのタイプによっては、この果皮や種を果汁に漬け込む時間の長短をコントロールします。

一方で日本酒の場合、玄米そのままの状態で使われることはありません。基本的にはある一定以上、お米の外側を削り落とします。この削る作業を「精米」、コメを削ることを「磨く」と言います。

なぜコメを磨く必要があるのでしょうか

日本酒の原料に適しているとされるお米は「酒造好適米」と呼ばれます。普段私たちが食べているお米に比べて、米粒が大きく、粒の中心に白い芯の部分(心白)があって、たんぱく質含有量が少ない、などの特性があります。

特にこの「たんぱく質」は、日本酒のうま味の素になるものでもあるのですが、多すぎると、雑味として感じられることもあり、この「たんぱく質」「脂質」などが多く含まれるコメの外側の部分を削り取るわけです。

「精米歩合」って、なに?

「精米歩合」は、「玄米を100%」として、米を磨いた後に「残った割合」を表したものです。「残った割合」ですから、磨けば磨くほど精米歩合は小さくなってゆきます。ここが間違えやすいところなのですが、70%、80%など「精米歩合が高い」ということは、磨きが「少ない」、ということになります。

この「精米歩合」と「特定名称」について、特にリーデルの「大吟醸グラス」「純米グラス」の特性をご理解いただく参考になれば・・・と、我が社のデザイナーが、既出の資料などを参考に作成した資料がこちらです。どうですか、とても解りやすいですよね。

そこで「大吟醸」です。

上の資料にも書かれていますが、大吟醸酒の規定は「精米歩合50%以下」。原料のお米を半分以上磨いていますよ、ということです。「たんぱく質」「脂質」をできるだけ除いた状態の原料米を使用していますので、このお酒は恐らくスッキリした雑味のない方向性の味わいなのかな、と推測できるわけです。「大吟醸」から「大」が取れた「吟醸」は、精米歩合が60%以下ですので、「吟醸」よりも「大吟醸」の方が、より多く米を磨いていることになります。

「精米」って、現代の技術を使えば簡単な作業なんですか?

ちなみにこの「精米」という作業ですが、銘酒「蓬莱泉」を醸す関谷酒造さんのHPには、その作業時間についてこのような説明があります。

「通常精米が進めば進むほど回転を落としてゆっくり精米する必要 があるため、精米歩合に比例して時間が増えるのでは無く、 おおよそ70%なら12時間、60%なら24時間、50%なら 48時間、40%なら72時間、 35%では100時間、と累進的に 精米時間がかかるようになります」

精米って、ものすごく時間のかかる作業なんですね。

それだけ丁寧に時間をかけて磨かれたお米から醸される大吟醸酒。ぜひ造り手の込めた思いも感じながら味わいたいものです。

「磨く」ことが目的ではない。造り手の思い描く日本酒を造るための「磨き」

それでは、「磨けば磨いたほど、よいお酒」と言えるのでしょうか?

精米機の革新が起こる前までであれば、「磨く」こと自体に価値があったかもしれません。けれども、現代のお酒作りにおいて「米を磨く」ことは、造り手自身が「こういうお酒を飲みたい、造りたい」とイメージするお酒を造るための手段の一つなのだろうと思います。

最近では、「あえて磨かない」ことによる「米のうま味」を楽しむお酒も見直されています。以前であればネガティブなものと感じられていた「多めのたんぱく質」がもたらす「重み・雑味」でさえも、醸造技術の発達や、造り手の美的感覚により、そのお酒にしかない魅力に昇華させたお酒のタイプです。

一方で「大吟醸酒」はどこにあるのでしょうか。

「磨いた」からこそ表現できるお酒の魅力。「磨いた」からこそ、スッキリ、軽快、なのは当たり前です。スッキリさ、軽快さ、というわかりやすい魅力だけでなく、「磨いたのに」爽やかなお酒の味わいの中にも存在感のある「米のうま味」、軽さではなく後味を品良く引き締める「ミネラル感」。

なぜ、その蔵の、そのお酒を選んで飲むのか。そこには、ただ単に「飲みやすい」とか「香りが華やか」だけではない、原料となるお米本来の力や、田んぼの土壌やその土地に流れる水の質(土地の個性)を感じられる、その蔵、その銘柄でなければならない「お酒の背景」があるはずなのです。

その「背景」までも感じ取るために、大切になってくるのが「お酒の状態」「温度」「器」なのです。

『リースリング』グラスとの5mmの差

<ヴィノム> リースリング・グラン・クリュ(写真左)と <ヴィノム> 大吟醸(右)

『大吟醸』グラスと『リースリング・グラン・クリュ(以降は『リースリング』)』グラス

これらは全て、ステム(脚)の長さも、元になるボウルの卵型も全く同じで、違うのは、飲み口をカット位置だけなんです。『リースリング』グラスを、あと5mm下の位置でカットしたのが、『大吟醸』グラスです。その差は「5mm」。

「たかが5mm」なのですが、この5mmの差が、日本酒の味わいに決定的な違いをもたらすのですから、お酒とグラスの関係は面白い。

『大吟醸』『純米』両方のグラス開発にご協力をいただいた、佐浦酒造「浦霞」

『大吟醸』グラスの入ったチューブ缶には、オーストリア大使館で行われた最終選考会に参加した12蔵の出品酒のラベルがプリントされています。その中ほどには、宮城県の塩釜にある佐浦酒造さんのラベルが。

今回、こちらの佐浦酒造さんで、「浦霞・大吟醸酒」と『大吟醸』グラスのセットをご販売いただけることになりました。

こちらの「浦霞・大吟醸酒」は、「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」で、2015年から2019年まで連続5年の金賞受賞(2016年、2017年は最高金賞)、そしてをしている、国内外で高い評価を受けるお酒。特にこのアワードでは、お酒の審査にも、部門別に、リーデルの『大吟醸』『純米』『シャンパーニュ』のグラスが使われ、実際にそれらのグラスでの官能評価が行われていますから、この「浦霞・大吟醸」と『大吟醸』グラスの相性は折り紙つきと言って間違いありません。

実際に、『大吟醸』グラスにこのお酒を注ぐと・・・

かなり冷やし目でも、注いですぐに、若くみずみずしい和梨やリンゴの香り、徐々に温度が上がってくるにつれて、熟れた和梨やフレッシュな洋梨のような甘味の増した香り、さらにお米由来の香りもほんのり加わって、複雑でいて柔らかく、華やかすぎない、佐浦酒造さんらしい品の良い香りを楽しませてくれます。

そしてひとくち・・・。

『大吟醸』グラスでは、『リースリング』グラスよりも、ほんの少し舌先を飛び越えたあたりからお酒が乗ってきます。このことが、お米由来の甘味、旨味、酸味、ミネラル感の絶妙なバランスを楽しませてくれるのですが・・・。とにかく柔らかい。甘・うま・酸・ミネラルの味わいの要素が、どこにも引っかかることなく、スーッとのどの奥に消えてゆく。いつ飲んでも、飽きることのない旨いお酒です。

グラスについては、こちらの特別セットご購入者限定でご視聴いただける動画の中で、詳しく解説しておりますので、素晴らしい「浦霞・大吟醸」を『大吟醸』グラスでお楽しみいただきながら、是非ご覧ください。

和の酒器も良いものですが、「なぜこの形状、このグラスなのか」という特別な解説動画もご覧いただけますし、何より、専門家によるブラインドテイスティングで評価された最適な組み合わせのグラスで、「浦霞・大吟醸」をお楽しみいただける、魅力的なセットです。

10月1日、「日本酒の日」も近づいてきました。みなさん、美味しいお酒を楽しむ準備は万端ですか?

佐浦酒造さんの公式オンラインショップへは、こちらをクリック!
浦霞×リーデル 特別セット

  • 庄司 大輔Daisuke Shoji
  • (社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ/リーデル社 ワイングラス・エデュケイター

1971年神奈川県生まれ。明治大学文学部文学科卒業、専攻は演劇学。 塾講師、レストラン勤務などを経て、1998年(社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ呼称資格取得。1999年にボルドー地方サンテミリオンの「シャトー・トロットヴィエイユ」で学ぶ。2001年リーデル・ジャパン入社、日本人初の「リーデル社グラス・エデュケイター」となる。リーデルグラスとワインの深いつながりやその機能を、グラス・テイスティングを通して広く伝えるため、文字通り東奔西走している。
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