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2019/08/27

SakeFoodRestaurant

【リーデル わいん部_008】至福の日本酒フードペアリングは「酒に料理を」合わせる:泉橋酒造直営「蔵元佳肴いづみ橋」体験記(前編)

『純米』グラス開発のためのワークショップにもご協力をいただいた泉橋酒造さん。創業は江戸・安政4年(1857)。全国でも珍しい「栽培醸造蔵」として酒米の栽培から醸造まで一貫して行なっていることや、「全量純米酒蔵」であることでも知られていますが、可愛らしいトンボヤゴをデザインしたラベルも印象的です。

今回【リーデル わいん部】では、海老名駅からほど近い場所にある、泉橋酒造さんが営まれるレストラン「蔵元佳肴いづみ橋」さんが提案する「日本酒のフードペアリング」を堪能して参りました。

盛りだくさんな内容でしたので、とても1回の記事では納め切ることができません。前後編の2回に分けて、その魅力をご紹介したいと思います。

「料理に酒を」ではなく、「酒に料理を」合わせる特別なペアリングコース

料理長の根本さんは1973年生まれの今年46才。もともと仙台で営まれていたご自身のお店で「酒に料理を合わせる」というコンセプトを実践されていました。

料理に日本酒を合わせるのではなく、その逆。「日本酒に合わせて、素材や料理を考える」・・・。体験する側としては理想的なフードペアリングではありますが、提供する側としては手間暇とアイデア、そして何より主役となる酒や合わせる素材への深い理解、季節ごとに移り変わる旬の素材を酒に寄り添わせしっくりと重なり合わせる料理の腕、日本酒の状態やサービス温度のコントロールが求められます。

根本さんが営まれていたのは、仙台は言うに及ばず全国の日本酒好きの間でも知る人ぞ知る伝説のお店「しん」。カウンター8席にテーブル席を合わせて15名がやっとというこじんまりとしたお店でした。だからこそ「今よりも、もっと手の込んだことをやっていたんですけどね」日本酒フードペアリングの求道者はさらりと一言。この根本さんのペアリング・センスに惹かれ、お店へ通い続けていたのが泉橋酒造6代目蔵元・橋場友一さんです。

今回根本さんに直接お話を伺うまでは、酒どころ宮城のお店ですから、「しん」では、地元のお酒に合わせてのペアリングをなさっていたものとばかり思い込んでいました。ところが、「日本酒に料理を合わせる」というコンセプトを実践する上で、さまざまなお酒を利き比べる中で、ご自身の料理との相性の良さを感じる「泉橋酒造」の酒に惚れ込み、長らくフードペアリングでは泉橋酒造のお酒を使い続けることになります。仙台なのに(笑)。このことをきっかけとして、根本さんと橋場さんとの出会いが生まれたのだそうです。それ以降7年に渡り、根本さんの料理とペアリングセンスに惚れ込んだ橋場さんはお店へ通い続けます。

そんな中で起きたあの大震災。さまざまなタイミングが重なる中で、橋場さんからの熱烈なラブコールに応え仙台から海老名へ本拠を移したのが2015年4月。その1年後となる2016年7月7日に「蔵元佳肴いづみ橋」がオープンしました。

庄司が堪能させて頂いたメニューがコチラ(2019.8.1)

「蔵元佳肴いづみ橋」さんでは、お料理は「おまかせ(6,000円〜8,000円)」のみ。その料理に合わせておまかせで日本酒が共される「酒のペアリング(7~8種)」コース は、3,000円(メイン、約600ml程度)と2,000円(ハーフコース、360ml程度)の2種類が選べます(もちろん、好みの銘柄はボトルでのオーダーも可能です)。アルコールNGの方にも、オリジナル・ドリンクなどがご用意されていますので、お料理・お酒とも詳細はご予約の際にご相談されると良いですね。

 これぞ「純米」グラス最高の舞台と確信!「純米酒 × 純米グラス × うまい肉」

お酒の解説をしていただいた伊藤さんによれば「泉橋酒造ならではの、少し硬度の高い水がもたらすキレの良さ後半の締まりに加えて、純米酒のうまみがお酒からしっかりと感じられるので、味わい豊かなお肉料理の場面で使うことが多いですね」とのこと。グラス開発の狙い通りのシーンで活用して頂けて嬉しいです。

感激のペアリングメニューはこちら:

日本酒:茜 黒とんぼ(純米生酛仕込み/70%精米/海老名亀の尾/醸造年2016/冷や)
お料理:<伊勢原> やまゆり牛 イチボ 〜燻煙山椒醤油焼き〜

お肉自体の美味しさはもちろん、ゆっくり時間をかけて日本酒との相性を楽しんで欲しいとの思いから採用されている低温調理がペアリングのポイント。低温で時間をかけた調理のため、料理が冷めても肉の柔らかさはそのまま。

噛むほどに口中に広がる肉の旨味が、「冷や」で共される「茜 黒とんぼ」と柔らかく馴染みます。

「黒とんぼ」シリーズは、2年以上蔵内で熟成させてから出荷される、生酛仕込みの純米酒。今回いただいたお酒も醸造年2016年の2年熟成で、ちょうど質感も柔らかくなり、お肉の旨味と柔らかいテクスチャーが絶妙な重なりを生み出します。

『純米』グラスの特徴である、とても広い口径が、広い流れでたっぷりとお酒を口に含ませ、またそのボウル形状から、口に含んだ日本酒が舌の前半でワイドに広がり「甘・旨味」をしっかりと感じさせてくれます。

イチボを一切れ口に含んでよく噛みほぐせば、上品な燻製と山椒の香りが鼻に抜けつつ、肉の旨味がじわじわと口中に広がります。そこに重ねるように『純米』グラスから「茜 黒とんぼ」を一口。「肉と赤ワイン」が生み出すものとは大きく異なるしみじみとした旨味のさざ波が、寄せては返すようにいつまでも口中に留まり続けます。

ご自宅でも実践していただきたいペアリング!
この「うまい肉 × 純米酒 × 『純米』グラス」は、想像を超えるくらい「うまい肉 × 赤ワイン」とは異なる幸せを口中にもたらしてくれます。

 抱卵を前にクリーミーさの増した「ちちこい牡蠣と海鞘」のひとさら

「ちちこい牡蠣(乳濃い牡蠣)」。「蔵元佳肴いづみ橋」さんのFacebook を拝見すると、お店で提供されていた2ヶ月半ほどの期間の中だけでも、複数の調理方法で提供されていたようです。仕入れた素材の状態、合わせるお酒、季節感などによる調理方法の変化。毎年仙台の産地には顔を出され、生産者とのコミュニケイションを大切にしているという根本さん。こんなあたりにも、素材へのこだわりが垣間見えます。

この「ひとさら」を合わせたのが

いずみ橋 楽風舞(純米吟醸/55%精米/海老名産楽風舞/醸造年2017/涼冷え)

この「ちちこい牡蠣」。8月末頃の抱卵を控えてクリーミーさが増しているのに加えて、さらにひと手間がかけられています。注射器で旨味の詰まった出し汁を注入してある。まさに旨味爆弾。牡蠣そのものの自然な味わいも良いものですが、そこは根本さんのコンセプトである「いかにその酒に合わせるか」、そのためのひと手間が、ペアリングの完成度・酒と料理の距離 をさらに縮めてくれています。2年熟成された楽風舞の熟成感がいい塩梅で牡蠣のクリーミーな旨味と磯の香りに重なります。

楽風舞:良食味品種である「どんとこい」と酒米品種「五百万石」を交配

今回飲ませて頂いたのは、お店の在庫も終わりかけという「醸造年2017」のもの。「楽風舞」というお米は、すっきりとした味わいになりやすいそうなのですが、この年はしっかりと味を出した仕上がりだったのだそうです。それがまた、この「ちちこい牡蠣」にバッチリ。

「翌年の2018年は、五百万石のキャラクターが強く出た仕上がりですね」という「醸造年2018」も飲み比べしましたが、この料理には絶対に「2017BY」です。「この酒に、この料理」さすがの組み合わせでした。きっと「2018BY」に切り替わったら、根本さんのお料理もガラッと変わるんだろうな、と想像できるくらい、「2017BY」と「2018BY」のキャラクターに違いがあるのも面白かったですね。

スターターは「純米大吟醸 生酛 生酛仕込み」と雲丹のコラボから

順序がバラバラですみません。今回の(前編)ではもう1品、コースの最初のひとさらをご紹介します。

コースのスタートは「純米大吟醸 いずみ橋 雄町 ー生酛仕込みー」
合わせるひとさらは「がぜ雲丹 〜はまぐり昆布水潮で〜」

根本さんがしきりに言葉にしていた「口内調理」をコースの初っぱなから実感できたひとさらです。雲丹も美味しい、お酒も美味しい、どちらか単品だけでも十二分に満足できるクオリティなのですが、雲丹を舌の上でねっとりと味わいながらこの酒を口に含むと、口中に磯の香りがふわっと立ち上り鼻に抜けてゆきます。これが雲丹だけでは感じられない風味なんです。お酒を口に含む時に、お酒が磯の香りをまとった潮風を口中にそよがせるような感覚です。「醸造年2015」という、この日共されたお酒の中では最も熟成年数が高いお酒のもつ熟成感が、磯の香りに寄り添います。

これがコースのスターターですから。1ラウンドの30秒も経たない間に、井上尚弥の右ストレートをカウンターでくらうようなものです。参ってしまいます。いやが上にもその後の展開に期待が高まるというものです。

みなさんが「蔵元佳肴いづみ橋」さんへ行かれる際には、どんな趣向で楽しませてくれるか、他人事ながら僕もワクワクしてしまいます。「季節ごとにメニューが変わるのを楽しみにされている常連さんが多いんです」と言う伊藤さんの言葉にも納得です。

次回(後編)では、「酒の肴盛り合わせ」「カツオづくしのひとさら」「ご飯もの」「デザート」「店内の雰囲気」などをご紹介します。乞うご期待!

蔵元佳肴 いづみ橋

  • 住所 〒243-0436海老名市扇町12-33 フィールズ三幸 1階
  • 電話・FAX 046-240-9703 FAX046-240-9704 予約専用電話046-205-0128
  • アクセス JR相模線「海老名駅」より徒歩5分、「ららぽーと海老名」の道路を挟んで西側のセンチュリー21の入っているビルの奥です
  • 営業日&時間 火~土曜日 17:30~22:30 、日・祝日14:00~20:30
  • 定休日  基本的に月曜日(ひと月6日の定休日)
  • お席  28席(個室は最大8席)、すべてテーブル席
  • お支払  現金、各種クレジットカード
  • 公式HP へはコチラ:http://izumibashi.com/kakou/
  • 庄司 大輔Daisuke Shoji
  • (社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ/リーデル社 ワイングラス・エデュケイター

1971年神奈川県生まれ。明治大学文学部文学科卒業、専攻は演劇学。 塾講師、レストラン勤務などを経て、1998年(社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ呼称資格取得。1999年にボルドー地方サンテミリオンの「シャトー・トロットヴィエイユ」で学ぶ。2001年リーデル・ジャパン入社、日本人初の「リーデル社グラス・エデュケイター」となる。リーデルグラスとワインの深いつながりやその機能を、グラス・テイスティングを通して広く伝えるため、文字通り東奔西走している。
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